五
誰も他にいなくなった離れ座敷では、忽ち形勢が一変した。金三郎の胸倉を取って智栄尼は小突き始めた。 金三郎は両手を合せて拝み拝み。「まァ密《ひそ》かに。荒立ては万事が破滅、密かに……頼む……これ、後生じゃ、頼む」「いや頼まれぬ。破滅しても構わぬ。いや、破滅の方が却って拙尼《...白麻の衣《きぬ》に黒絽《くろろ》の腰法衣《こしごろも》
2015/12/8
その光で見ると、白麻の衣《きぬ》に黒絽《くろろ》の腰法衣《こしごろも》。年の頃四十一二の比丘尼《びくに》一人。肉ゆたかに艶々《つやつや》しい顔の色。それが眼の光を険《けわ》しくしているのであった。「おう、お前様は晩方お泊りの尼さんでは御座んせぬか。あなたのお部屋は表二階。それがいかに暗闇《くらや...
— posted by id at 01:58 pm
母親が隠れて頑張っている
2015/12/8
逃げ出そうとすれば庭木戸の傍に母親が隠れて頑張っている筈。それを突破して逃げる程のそれだけの勇気も出せぬので、お綾は縁側に手を支《つ》いたまま、モジモジして控えるのであった。「まァ、何をその様に遠慮しているのじゃ。拙者は近く御当家に御召抱えと相成る身。さすれば早速又家内を迎えねば相成らぬで、それ...
— posted by id at 01:58 pm
T:

Y:

ALL:



Online: 














Created in 0.0182 sec.