猛《たけ》り立った智栄尼

「まァまァ智栄殿。まァ腹も立とうが、ここが一番大事のところ。何事も御かんべん御かんべん。とにかく先ず奥二階へ」 猛《たけ》り立った智栄尼を俊良は奥二階へ連れて行き、左内と共に哀訴嘆願。男子が二人揃って何度お辞儀をしたか拝んだか分らなかった。 つまりこの尼と金三郎とは深い関係であった。それを説いて...

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誰も他にいなくなった離れ座敷

       五

 誰も他にいなくなった離れ座敷では、忽ち形勢が一変した。金三郎の胸倉を取って智栄尼は小突き始めた。 金三郎は両手を合せて拝み拝み。「まァ密《ひそ》かに。荒立ては万事が破滅、密かに……頼む……これ、後生じゃ、頼む」「いや頼まれぬ。破滅しても構わぬ。いや、破滅の方が却って拙尼《...

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白麻の衣《きぬ》に黒絽《くろろ》の腰法衣《こしごろも》

 その光で見ると、白麻の衣《きぬ》に黒絽《くろろ》の腰法衣《こしごろも》。年の頃四十一二の比丘尼《びくに》一人。肉ゆたかに艶々《つやつや》しい顔の色。それが眼の光を険《けわ》しくしているのであった。「おう、お前様は晩方お泊りの尼さんでは御座んせぬか。あなたのお部屋は表二階。それがいかに暗闇《くらや...

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