半田屋九兵衛夫婦も共に蒼くなった

 半田屋九兵衛夫婦も共に蒼くなった。宿泊者から変死者を出したとあっては、事がはなはだ面倒だからであった。 それは毒殺? とすればいよいよ掛り合。無論医師の俊良が、秘密を保つ為に一服盛ったなとは略《ほぼ》推察は出来るのであったが、それもしかし金三郎と娘お綾との結婚の為には、邪魔が払えた勘定でもあるの...

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猛《たけ》り立った智栄尼

「まァまァ智栄殿。まァ腹も立とうが、ここが一番大事のところ。何事も御かんべん御かんべん。とにかく先ず奥二階へ」 猛《たけ》り立った智栄尼を俊良は奥二階へ連れて行き、左内と共に哀訴嘆願。男子が二人揃って何度お辞儀をしたか拝んだか分らなかった。 つまりこの尼と金三郎とは深い関係であった。それを説いて...

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誰も他にいなくなった離れ座敷

       五

 誰も他にいなくなった離れ座敷では、忽ち形勢が一変した。金三郎の胸倉を取って智栄尼は小突き始めた。 金三郎は両手を合せて拝み拝み。「まァ密《ひそ》かに。荒立ては万事が破滅、密かに……頼む……これ、後生じゃ、頼む」「いや頼まれぬ。破滅しても構わぬ。いや、破滅の方が却って拙尼《...

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