大宮の町へ出たのは三時

 大宮の町へ出たのは三時。どおんと暑い。八百屋の店先きに胡瓜の山。美味《うま》そうなのを二本買って、母と二人で噛《かじ》る。塩があればもっと美味いだろう。二人で、手分けして、両側を軒並みに声をかけて行く。「クレップの襯衣《シャツ》と、すててこ[#「すててこ」に傍点]はいりませんか、お安くしときます...

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お母さんへ声をかけてやる

 時々、お母さんへ声をかけてやる。人間がしゃがんでいるかっこうというものは、天子様でも淋しいかっこうなんだろう。皇后さまもあんな風におしゃがみなのかねえ。金の箸《はし》で挾《はさ》んで、羽二重の布に包んで、綺麗な水へぽちゃりとやるのかもしれない。 俺とお前は枯れすすき、花の咲かない枯れすすき……。...

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高架線の下をくぐる

(八月×日) 高架線の下をくぐる。響々と汽車が北へ走ってゆく。 息せき切って、あの汽車は何処へ行くのかしら、もう、私は厭だ。何もかも厭だ。なまぬるい草いきれのこもった風が吹く。お母さんが腹が痛くなったと云う。堤に登って、暫《しばら》くやすみなさいと云ってみる。征露丸を飲みたいと云うけれど、大宮の...

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