今日は一大事の密議

       七

 野末源之丞の屋敷へ呼出された半田屋九兵衛。薄々娘との関係を感付かぬでもなかったので、これはきっと金三郎様に取られぬ前に、娘を所望されるのではあるまいかと、そういう心配をしながら罷り出た。「や、九兵衛。今日は一大事の密議じゃで。遠慮は入らぬ。近う」「へえ」「その方の宿泊人に、小笠原金三郎等の一行があろう」「へえ、三人お泊りに御座りまする」「恐れ多くも、御当主の御落胤と申立て、証拠の脇差を持って、御召抱の願いに魂胆致し居るとか。実際であろうな」「能《よ》く御存じで、実は出羽様の天城屋敷御入りの為、差控え、御帰りを待って内々その運びにという事で……それを能くあなた様には御存じで」「いや、拙者ばかりではない。既に出羽殿にも御承知」「へえ――、えらいお早耳で」

「出羽殿より早速これを御上の御耳にも入れたところ、以ての他の事。しかしながら、浪人とあるからには家中同様の刑罰も加えられまい。見す見す騙り者と知れながらも、手の下し様もない事故《ことゆえ》。願いのままに一応は召抱え、その上にて、即座に切腹仰付けられるという、こうした御内意に定ったのじゃ」「うへ――」「不届なる浪人どもは、それにて始末は着くであろうが、その騙り者の宿を致したる咎《とが》に依って、その方半田屋は欠所。主人は所払い」「うへッ」「いかにもそれは気の毒と存じるので、内々その方の耳に入れて置く。そこまでに立至らぬ前に、何とか好きように致したらどうじゃ。これは拙者がホンの好意からの注意」「や、有難う御座りました。なる程御召抱えの上なら切腹申付けられても否《いな》み様は御座りませぬな。宜しゅう御座りまする。左様当人にも申聞けまして、や、これは、実に、大変な事になりました」 アタフタとして九兵衛は帰り去った。

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