当国|長船《おさふね》の住人初代|長光《ながみつ》の作

「遠慮とあればそのままで好いが、中身は当国|長船《おさふね》の住人初代|長光《ながみつ》の作じゃ」`「へえ――」`「これを御所蔵のこの御方は、仮に小笠原《おがさわら》の苗字を名乗らせ給えど、実は新太郎少将光政公の御胤《おんたね》、金三郎《きんざぶろう》様と申上げるのじゃ。改めてその方に御目通りゆるされるぞ」`「うへえ――」` 半田屋九兵衛思わず畳へ額をすり付けた。`「いや、そんなに恐れ入るのはまだ早い。その様に仔細も承わらず恐れ入っては、この先の御用にも差支える。一応事情は申し述べる。その上にて、その方、金三郎様の御宿を致すのが迷惑と存ずるなら、遠慮なく申出でよ。早速我等は他に転宿致す。東中島の児島屋勘八、あの店の方が居心が好いように思われるで」`「どう致しまして、まず、まず」`       三` 浪人小笠原金三郎、同じく駒越|左内《さない》、医師|奥野《おくの》俊良、これだけが半田屋九兵衛方に当分宿泊となった。主人はもう有頂天で、三人を福の神扱いにした歓待ぶり。別して金三郎には、離れの隠居所を寝室に宛てがって、一人娘のお綾《あや》が侍女代りに付き切りであった。`「大変な事になって来た。今に九兵衛は帯刀御免、御褒美の金はどれくらいであろうか。イヤ一時に千両二千両頂くよりも、何か物産一手捌きの御役目でも仰せつけられた方が、得分が多かろうで」とまるで夢中。`「まァ一体、どうした事で御座りまする」` 妻のお幸《こう》は煙に巻かれてばかりはいなかった。

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