買うのが馬鹿の証拠だ

「どだい、買うのが馬鹿の証拠だ。」「あら、私、馬鹿じゃないわよ。子供なのよ。」「子供? お前が? へえ?」 僕は二の句がつげず、しんから、にがり切った。 それから数日後、僕はお酒の飲みすぎで、突然、からだの調子を悪くして、十日ほど寝込み、どうやら恢復《かいふく》したので、また酒を飲みに新宿に出かけた。 黄昏《たそがれ》の頃だった。僕は新宿の駅前で、肩をたたかれ、振り向くと、れいの林先生の橋田氏が微醺《びくん》を帯びて笑って立っている。「眉山軒ですか?」「ええ、どうです、一緒に。」 と、僕は橋田氏を誘った。「いや、私はもう行って来たんです。」「いいじゃありませんか、もう一回。」「おからだを、悪くしたとか、……」「もう大丈夫なんです。まいりましょう。」「ええ。」 橋田氏は、そのひとらしくも無く、なぜだか、ひどく渋々《しぶしぶ》応じた。 裏通りを選んで歩きながら、僕は、ふいと思い出したみたいな口調でたずねた。「ミソ踏み眉山は、相変らずですか?」「いないんです。」

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